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【キャラクター紹介】
※キャラクター紹介を見る前に※
ここは、長編ファンタジーラグナロクに登場するキャラクターの簡単な紹介を行う場です。
物語の進行とともにこちらも更新されていくと思いますが、最新話までの情報は既出のものとして扱います。最新話までお読みになられていない場合は、ネタバレになる可能性もありますので、くれぐれもご注意ください。


『アーメリア・フォン・ヴァイスハイト』
アイジスティアの王女にして、皇帝アレクシウス・フォン・ヴァイスハイトの一人娘。通称アマリア。
顔立ちは美しく艶やかな黒髪と海の色の瞳が印象的。
母親から形見として遺された銀の指環が、誰も予期せぬ強い力を秘めていた為、
それを巡る争いの中に巻き込まれてゆく。

『アレクシウス・フォン・ヴァイスハイト』
アイジスティアの皇帝。勇猛果敢で戦場での采配は素晴らしく、獅子王と呼ばれている。
以前は民の幸せを重んじる皇帝だったが、王妃が亡くなってからはその言動に不穏なものが垣間見られるようになった。

『マリア・フォン・ヴァイスハイト』
今はもう亡くなったアマリアの母。光り輝く金髪と深く青い眼差しを持っていた。
その美しさと誰にでも分け隔てなく接する優しさから、国民にも愛されていた。

『ヴァンツァー・レパード』
闇に紛れて確実に標的を仕留める、銀髪の暗殺者。
その動きの鋭さと凄まじい戦闘能力から、「黒い風」の二つ名を持つ。
彼の本名を知る者は少なく、ヴァンツァーという名前すら本名かどうかは定かではない。
人と行動を共にすることを嫌い、その紅い瞳は常に冷たく光る。
とある出来事がきっかけで、アマリアと共にローケンバーグに向かうこととなった。

『ハーメル・ジャンペール』
ヴァンツァーたちがエウロパで出会った、穏やかで整った顔立ちの吟遊詩人。
詩歌に秀でているのは勿論のこと、旅慣れていて様々な知識を蓄えている。
常に微笑を絶やさず、落ち着いた振る舞いを取り、傍にいる人間に安心感を与えるような存在。
世界に数人しか奏者がいないと言われる、シェンバロの弾き手である。

『ニーナ・ヘレク』
エウロパの村を強襲した盗賊団の頭目。娘ながらに言動は男勝りで、大振りの半月刀を軽々と振り回す。燃えるような赤毛と金の瞳が特徴。

『ローザ・ベアトリーチェ』
アイジスティアの軍を率いる総大将。咲き誇る赤薔薇を彷彿とさせる美貌を持ち、剣の腕も並々ならぬものがある。
アマリアが幼い頃から傍に仕えて来た為に、彼女とは強い信頼で結ばれている。

『リーシャ・ディン』
とある村が出自の踊り子。村の長老から自分が伝説の「大地の巫女」だと告げられるも、本人にはその自覚が全くなく、引き留めようとする村人たちに逆らって村から飛び出した。
自由奔放な性格で、たまに口が悪い。
戦闘訓練は受けていないものの、踊りで鍛えられたキレのある動きと、生まれ持った怪力は驚異的な威力を誇る。

『ルーファス・コンシール』
ひょんなことからリーシャと旅をすることになった、青い僧服を纏った気弱な少年。
輝く金髪と澄んだ緑色の瞳は美しく、女の子と間違えられることもしばしば。
神都ベーグズールの見習い僧侶であるが、大教主に命じられて各地の寺院を巡る旅をしている。

第三十五話
既に、どれほど歩いたのかわからなくなっていた。奇怪な鳥の鳴き声が聞こえ、毒々しい色の虫が視界を横切り、相変わらず森は暗澹たる様相を呈している。

握っていた手が滑りそうになって、ヴァンツァーはもう一度アマリアの濡れた手を掴み直した。白く細い手はひんやりと冷たく、小刻みに震えているように思える。

額に掛かる黒髪を払いのける元気もなく、荒い息を吐くアマリアを見て、

「休むか」

ヴァンツァーがそう尋ねたが、アマリアは黙ったまま首を横に振った。
小さくため息をついて、ヴァンツァーは再び前を向いた。乳白色の霧は、晴れることも無く視界をふさいでいる。

見通しが悪く、息苦しいのも然ることながら、ぬかるみに足を踏み入れた時に、ブーツに染み込んでくる泥水が不快極まりない。濡れて身体に纏わりつく衣服は体温を奪い、凍えてしまいそうに寒く感じる。

ふと、何かに気を取られた拍子に足を滑らせ、アマリアが悲鳴をあげて前を行くヴァンツァーの衣服にしがみついた。
とっさに振り返ったヴァンツァーが、アマリアを抱きとめる。

「大丈夫か」

そう問いかけたヴァンツァーに、慌てて立ち上がり、礼を言いながら、アマリアは霧の向こうを指さした。

「あれ……」

アマリアが指さした方向に、ヴァンツァーも目を凝らす。
霧の向こう、立ち木の根元に、赤い羽帽子が落ちていた。アマリアが恐る恐る近づいて、それを拾い上げる。
辺りを見回してみたが、持ち主の姿は影も形も無い。

「これ、ハーメルさんのだよね……?」

恐ろしい予感を押さえつけながら、震える声で尋ねたアマリアだが、後ろから付いてきたヴァンツァーはむしろ、他のことに気を取られている様子だった。紅い目を霧の中に光らせ、耳を澄まして、周囲の気配を全身で感じ取ろうとしているように見える。

次の瞬間。

「伏せろ!」

叫んだヴァンツァーが、アマリアを押し倒すのとほぼ同時に、二人の頭上を巨大な毛むくじゃらのかたまりが、凄まじい勢いで通り過ぎた。

第三十四話
どれほど時間が経ったのだろうか。辺りがやけに静かだ。身体が思うように動かず、宙に浮いているような心地がする。

腹に鈍い衝撃を受けて、呻き声をあげると、気を失って項垂れていたハーメルは、ようやく重い瞼を開いた。

ここは、どこだろう。濁った視界のままで辺りを見回す。

どうやら、まだ森の中にいるようだ。びっしりと苔に覆い尽くされた岩や、曲がりくねった木々、それから、垂れ下がった植物の蔓が、視界一面に見える。妙に視界が開けていると思ったら、霧が無い。薄暗いのは相変わらずだが、先ほどよりも呼吸がだいぶ楽になったように感じる。

「……おい! おい!!」

いきなり真横から大声で叫ばれて、ハーメルは驚いてそちらの方を向いた。

間近に、こちらを睨んでいる赤毛の娘の顔があった。精悍な顔立ちで、活発そうな印象を受ける。先ほどからこちらに呼びかけていたらしく、山猫のような黄色い瞳を光らせ、だいぶ気が立っているように見えた。

しばらくぼんやりとその娘の顔を見ていたハーメルだが、はたと思い当たって、急に叫び声をあげた。

「おや! あなたはエウロパの時の!」

間違いない。エウロパを盗賊団が襲った時に、その盗賊たちを束ねていた赤毛の娘だ。薄暗がりでほんのわずかしか見ていないが、この印象的な顔立ちは忘れない。

娘が、眉をひそめてハーメルのことを見た。

「お前、どこかで会ったか?」
「いえ、会ったというか、見かけたというか」

両手をあげて肩をすくめようとして、ハーメルはようやくその両手が動かせないことに気づいた。
自分の体を見下ろして、

「なんですかこれは!」

再び叫び声をあげる。

彼の痩身にはまるで蚕の繭のように銀の糸が幾重にも巻きつき、おまけに木の枝から宙に吊るされていた。

「やっと気づいたのかよ……」

娘ががっくりと肩を落とす。いや、そう見えただけだ。娘の身体も、彼と同様に、細い銀の糸に、ぐるぐる巻きに覆われている。

「ここはどこですか? 何故私たちはこんなことに?」
「ここは霧の森の中。 あたしもお前も蜘蛛につかまったんだろ」

娘が不愛想に答えた。身体をゆすってみるハーメルに、

「その糸、力じゃ切れないぜ。 あたしもやってみたけど」

落ち込んだ様子で娘が言う。

「妙に落ち着いてるから、抜け出す方法を知ってるのかと思ったのに」

恨みがましい娘の言葉を尻目に、ハーメルは天を仰いだ。青空は見えず、白く濁った、ぼんやりとした光だけが見える。

一難去ってまた一難。どうやらまだまだ災難は続くらしい。

第三十三話
「アマリアさん!」

空に向かって、叫んでみる。

「ヴァンツァーさん!?」

今度は右手を口の横に添えて、先ほどよりも大きな声で。だが、耳を澄ましてみても、返事が返ってくる気配はない。

「困りましたね……」

心底困ったような表情で、ハーメルは呟いた。辺りを見回してみても、霧のヴェールが視界を遮り、殆どろくに見えるものは無い。かろうじて見える足元は、苔むしてじめじめと湿っている。この様子では、
あの二人が、ほんの目の前を通り過ぎても気付かないかもしれない。助けを待つのは絶望的だ。

しばらく思案に暮れたのち、ハーメルは滑りやすい足元に注意しながら、そろそろと歩を進め始めた。はぐれた場合は、その場を動かない方がいいことも多々あるのだが、今回はそれが得策ではないと思われたからだ。

既に、森に入ってからどのくらい時間が経ったのか、彼には分らなくなっていた。頭上からは薄ぼんやりと光が降り注いでいるが、それはもしかしたら太陽ではなく、光り苔の放つ光かもしれない。

奥へ進めば進むほど、霧はますます濃くなっていくようだった。息がつまり、視界がかすむ。耳は、蓋をされてしまったように、自分の息遣いだけが大きく聞こえる。液体化した重たい空気の中を、必死にもがきながら進んでいく印象だ。

ふと、右足を這うような感触がして、ハーメルは足元を見た。ムカデだ。どぎつい彩色で、自分の腕ほどもある。

考えるよりも早く叫び声をあげて、右足の大ムカデを払い落すと、彼はブーツのかかとで、思い切りその頭を踏みつけた。

ぐしゃり。と気味の悪い音がして、粘り気のある緑色の液体が、足元にゆっくりと広がる。

鼻を突く酸の臭いが立ち上る中で、ハーメルは荒い息で天を仰いだ。
青い色の一つでも見えればいいものの、頭上はどこまでも濃霧に覆われ、気が遠くなるような乳白色をしている。

その時だ。

一瞬、視界の端に凄まじいものが横切った気がして、ハーメルの背筋が凍りついた。今見たものが幻であればいいと、神にも祈る気持ちでそろそろと後ろを振り返る。

次の瞬間、彼は自分のものとは思えない叫び声をあげて、霧の中を一目散に駆けだした。

大蜘蛛だ。振り返った彼の視界を埋め尽くしたのは、赤く光る八つの巨大なやぶにらみの目玉と、見上げるようなその体をびっしりと覆い尽くす黒い鋼の剛毛、そして、獲物を見つけて喜ばしげに打ち鳴らされる、鮮やかな紫の毒液を滴らせた大きな牙だった。

悪夢のように巨大な体躯が、丸太よりもなお太い八つの足に運ばれて、立ち木を薙ぎ倒しながら、目の前を逃げる小人の背中を追いかけ始める。

前足から繰り出された大爪の一撃を、ハーメルは背中に背負った木のケースでかろうじて受け止めたが、凄まじい勢いで木の幹に叩きつけられた。

「くそ……」

小さく呻いて再び走り出そうとするが、痺れる足は思い通りにならない。
悲鳴をあげて腕を突き出したハーメルの身体に、巨大な黒い影が覆い被さった。

第三十二話
アマリアが、小さく呻いて露に濡れた黒髪を掻き揚げた。

その後ろを歩くハーメルも、いつもは風にそよいでいる金髪が、今は額にべったりと張り付いている。
柔和な表情を浮かべているはずのその顔を曇らせて、上から垂れ下がっている腐ったようなシダの葉を払いのけた。

先陣を切るヴァンツァーも、似たようなものだ。黒衣が身体に張り付き、銀髪から露を滴らせ、不快極まりないという顔をしている。

エウロパを旅立ってから一週間と数日が過ぎて、一行の姿は霧の森の中にあった。

周囲は、森に入ってから物の数分で、伸ばした手も霞むほどの濃い霧に包まれてしまっている。
日光は遮られて薄暗く、そして何よりも、寒い。身体にまとわりつく衣服のせいで、動きにくくもある。

はぐれないように、指環をしていないほうのアマリアの手を握って、ナイフを振るいながら道なき道を切り開きながら進んでいたヴァンツァーは、アマリアに肩を叩かれて後ろを振り返った。

なんだ。目でそう問いかけると、アマリアがさらに後ろを指さした。

乳白色の霧の中で、ハーメルがこちらにコンパスを示して、何事かを言いながら、口をパクパクさせている。
あまりにも濃い霧のせいで、視界ばかりでなく声までよく聞こえないのだ。

ハーメルも、ようやくそれに気づいたのだろう。霧の中を、ゆっくりとこちらに向かって歩いてきた。白色の中から、くすんだ赤色の羽根つき帽子が姿を現す。

「コンパスを見てください」

言われて、ヴァンツァーは懐から自分のコンパスを取り出した。ハーメルと似た型のものだ。

不安げに覗きこんだアマリアが、小さく悲鳴を上げた。コンパスの中の磁針は、壊れたようにひっきりなしにあちこちを指しては回っている。

「……森のせいか」
「地中の鉱物の影響でしょうね」

そう言ってハーメルが、自分のコンパスを二人に見せた。ハーメルのコンパスも、ヴァンツァーのと大差ない動きだ。針が動きまわって、方角が定まらない。

「どうするの? 出られるの?」

泣きそうな声で、アマリアが尋ねた。

「この森は、南北には長いですが、東西で見ればそれほどでもありません。 我々は西を目指しているのですから、出来る限り真っ直ぐに進んでいれば、いずれはどこかに出るはずですが……」

そうは言ったものの、ハーメルの顔も苦々しい。ヴァンツァーは、むっつりと黙ったままだ。紅い目が、霧の中で不気味に滲んで見える。

「とりあえず、はぐれないようにしましょう。ここではぐれたら致命的です。 アマリアさんは、先ほどと同じようにヴァンツァーさんと一緒に。 私もすぐ後を付いていきます」

気を取り直したようにハーメルがそう言って、一行は再び霧の中を歩き始めた。

ヴァンツァーが、時折風を使っているのだろう。視界が一瞬晴れては、また白いものに沈み込むようにして満たされる。

心なしか、呼吸が苦しい。尋常で無い湿度のせいだ。まるで、水の中で無理やりに息をしているようだ。

脅すような鳥の鳴き声が聞こえて、怯えた目で背後を振り返ったとき、アマリアはようやく恐ろしいことに気がついた。

「ちょっと……」

そう言ってヴァンツァーの袖を引く。ヴァンツァーが立ち止まって、振り返った。

「ハーメルは?」

辺りはひんやりと静まりかえり、気味の悪い木々の腕が覆いかぶさっている。そして、二人が通ってきた道のどこにも、赤い羽帽子の影は見当たらなかった。
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