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第九話
大きな物音に、深い眠りに沈んでいたアマリアも、ようやく目を覚ました。二、三度瞬きをすると、ベッドの上に起き上がって、大きく伸びをする。窓から吹き込んだ爽やかな風が、笑いながら王女の顔を撫でた。

波の音に振り向けば、ベッドの横の窓からは、素晴らしい景色が一望できた。すでに太陽は水平線から顔を出し、海は虹色に輝いている。遠くのほうにいるのは、早くも漁に出た船だろうか。それとも、異国の荷物を積んだ貿易船だろうか。さざ波の音に乗って、船乗りたちの声が聞こえてくる。

癖のついた美しい黒髪を、手櫛でゆっくりととかしながら、今度は部屋の中を振り向く。

そこでようやくアマリアは、倒れている本棚と、散らばったたくさんの本、そしてそれに半分埋もれて、仏頂面で自分のほうを睨んでいるヴァンツァーを見つけた。

「あの――、」

話しかけようとして、口を右手でかくして、小さく欠伸をすると、

「おはようございます」

挨拶をする。

ヴァンツァーは小さく鼻を鳴らしたきり、本の山から抜け出すと、本棚を起こし、黙々と本を片付け始めた。一冊、一冊、丁寧に背表紙を揃え、並べていく。

「挨拶は大事なのに……」

眠たい目をこすりながら、アマリアは小さく呟いた。続いて、ゆっくりとあたりを見回し、ようやく自分が見知らぬ場所にいることに気づく。

「あの――、」

先ほどと同じ調子で声をかけたアマリアに、

「なんだ!」

今度は苛立たしげな声をあげて、ヴァンツァーが振り向いた。その手には、赤い背表紙に金の糸で『イブン・ソレイユ世界周行記』と刺繍された本が握られている。

ここはどこですか、という言葉を飲み込んで、

「あ、その本、私も読みましたよ」

アマリアはそう言った。嬉しそうに微笑む。

大きなため息をつくと、ヴァンツァーはその本も本棚に仕舞い込んだ。
ようやくすべての本を片付け終わったようで、両手についたほこりを払う。

ベッドのそばの椅子にどっかと腰かけると、アマリアのほうを向いて、ヴァンツァーはこう言った。

「お前に訊きたいことがある」

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