そうして話している間にも、また一つ思い出が光った。
シキは悲鳴を上げて両腕を差し出した。泡立つ光は腕の間をすり抜けて、見る見るうちに天へと昇っていく。
「触れやしないよ」
ロクは微笑んで、そっとシキの腕に触った。ひんやりと冷えた指。口元は笑っているのに、ロクの目は寂しそうに光っていた。
「仕方のないことなんだ。皆失って生きてる。全部抱えていくには余りにも重すぎる」
今や光の塊となったそれは、まるで蛍のようにばらばらにほぐれて空へと飛んで行った。まるで輝く雪のように、それは暗い夜空に向かって降り注いでいた。重さなんてまるでないみたいに。
「シキは抱え込みすぎた。だからこんなところまで落ちてきてしまったんだよ。きっと」
さぁ、もう歩き出す時間だ。独り言を言うみたいに、ロクは呟いた。怖がることはないよ。本当に大事なものは、ずっと君とともにある。例え君がそれを忘れてしまったとしても。
「だから、もうさよならだ、シキ。暗闇を抜けるまで、決して振り返ってはならないよ」
願わくば、君と僕とが、もう二度と出会いませんように。そう囁くロクの目からぽろぽろと涙がこぼれる。さようならだ。彼の口がゆっくりと動く。怖がることはないよ、シキ。君が忘れても、僕がずっと覚えてる。だから、さようなら。